濃いめの激ウマ絶頂!

家帰ってもフローリングであみだくじをするしかやることがなかったのでiPhoneぼちぼちしながら即興でババババーッと書きました。所要時間はおよそ1時間半。終盤が本当に気に入らないんで多分気が向いた時にこっそりと書き直します。


  1. あの幾千もの名勝負を生み出した伝説の中学テニス全国大会が終了してから早数週間…青春学園中等部テニス部の面々は大阪の地に居た。
  2. 全国大会ベスト4まで上り詰めた新鋭大阪四天宝寺中学テニス部の顧問である渡邊オサムと竜崎スミレの間で時期は外れているが交流を深める意も込め合同合宿をしないかという話が持ち上がり、あれよとあれよと言う間に実現し今に至る。
  3. 四天宝寺と青学、両校とも中学テニス界では名のしれた強豪校でありその二校の選手達の腕前は言わずもがな。選手達は互いに切磋琢磨し自分達のスキルが着々と成長していくのを実感する充実した日々を送っていた。
  4. また彼らはテニスプレイヤーである前に何処にでもいる育ち盛りの中学生であり運動すれば腹が減る。ましてや此処は食の台所大阪。東京に住む彼らにとってこの地の食べ物はどれもこれも物珍しく、練習が終了したら四天宝寺の面々に連れられ浪速の町に繰り出食い倒れるのが合宿の楽しみの1つになっていた。
  5. 練習が終了したある日の夕方、不二は白石に連れられ繁華街を歩いていた。「ねぇ白石…」「なんや不二クン?」白石が立ち止まり、不二に振り返る。「どうして皆にはバレずにこっそり抜け出して来てくれなんて」疑問を口にする不二。その表情は訝しだ。
  6. あァ、えっとな。他の皆は居てもええんやが、千歳や手塚クンがおるとマズイんや。あ、いや別に嫌いとかそーいうのじゃないで!」意味深な言い回しをして言葉を濁す白石。「?」勿論、腑に落ちない不二。「わかったよ」だが別に取って食われる訳じゃないし此処は流れに身を任せてみる事にした。「おおきに!もうちょいやから!」「ああ」
  7. それから暫く歩き、ビル群も途切れ閑静な住宅街に差し掛かった所で不二の視界に見慣れたモノが見えてきた。「これは…」目測10m先にある10人程の行列。列を成している人間達は誰も彼もケータイや本などを弄り列が進むのを待っておりその背中からは陰鬱な雰囲気が漂っている。そして行列の先頭には自己主張激しい黄色い看板が。「二郎か!」「せや」
  8. 「正確に言うとインスパイアやけどな。関西に二郎はあらへん」「インスパイアか。始めてだよ」不二の脳裏に忘れていた疑問が浮かび上がる。「けど、なんで千歳や手塚が一緒じゃ駄目なんだい?二郎を食べるだけじゃないか」「えっとやな」バツの悪い顔をする白石。「アイツら『才気煥発の極み』使えるやんか?食べる前からタイム分かられるってのも興が削がれるやろ?」「何を言って」不二が何かを理解したのか口を塞ぎ、一拍の間。
  9. 「この僕とロットバトルをしようっていうんだね?」「せや浪速の聖書と天才のエクストララウンドや」不二が不敵な笑みを浮かべた。白石も不敵に笑った。2人の笑みの艶かしさは中学生のそれではない。彼らはテニスプレイヤーである前に歴戦のロティストなのだから。
  10. 列に並ぶ、食券を買う、着席しカウンターに食券を置く、水をグラスに注ぐの挙動を無駄なくこなした両者。「運がいいのか悪いのか…隣の席やな不二クン」「ふふっ、君へのリベンジ楽しみだよ」
  11. それから暫くし店主がトッピングを訪ねて来た。両者ノータイムで全マシマシ(ヤサイ、アブラ、ニンニク、カラメ、タマネギ、魚粉)をコール。「はいお待ち!」ドン!ドン!2人の手元に山の如くトッピングが聳え立った大豚(インスパイアなので大ブタダブルはない)が置かれる。
  12. 「いただきます」「いただきます」両者手を合わせラーメンに一礼。ロットバトルの始まりだ!
  13. 「んー!いくで!」白石が教科書通りの無駄のない動作で天地返し!「このヤサイ消えるよ」グルン!一方の不二も消えるサーブの回転を応用した天地返しを披露しヤサイをスープの海に鎮める!
  14. ハフ!ハフ!「今日のブタはブレてへんでー!んーっ!絶頂!」まずはブタの処理から取り掛かる白石。二郎系の魅力はスープに絡みつく麺もさる事ながらトロッと溶けたブタであるが、「美味しいものは後で食べる」精神でチマチマブタを食べていくと麺やヤサイを食べ腹一杯になった時にスープの中に残ったブタを見つけ絶望するハメになる。
  15. なのでこの白石の判断は正しいと言える。流石は二郎の聖書(バイブル)、全くの無駄がない。「不二クン?ハフッ!ブタはええんかい?後でモグッ!地獄見るでぇ」一方の不二はブタではなく先に麺から処理していた。「ああ、少し君に食べてもらうからね」ピクッ「なんやて?」
  16. 不二が箸でブタを2枚摘み高く掲げて離した。「いくよ」箸から離れたブタは勢いよく不二のコップの中に着水。「 不二クン何しとんのやギルティや!」「いや」シュルシュル!!コップの中に沈んだブタ達が1人でに勢いよく回転し始めた!そしてその回転力そのままで鮪や鮭の如く水面を飛び出し白石の丼の上に乗っかった!「三種の返し球(トリプルカウンター)ーー『白龍』」
  17. 「なっ!?不二クン!?白龍を応用して俺にブタを押し付けって言うのか!しかも一度コップに落とす事でブタの脂を落として食べやすくするっていう気遣いまで!」「フフッ、三種の返し球は見せなきゃ駄目だったよね?」動揺する白石、微笑を浮かべる不二。「あの時の仕返しハフッ不二クンやるやないか…モグッめっちゃ水っぽいやんかモグハフッ」
  18. 不二の白龍によるアンブッシュもあったが白石はブタをなんなく処理、本丸である麺に差し掛かる。一方の不二は白龍でブタを8割処理をしたもののブタを落とし駄目にした水を捨ててサーバーに入れ直しに戻る為のロスタイムがあった為、白石に僅かに遅れを取っていた。
  19. 「メン!メン!ヤサイ!メン!メン!ヤサイ!ハフハフッ」「パフ!はふ!」白石は麺とヤサイを適度に織り交ぜる事で口の中の脂を上手くリフレッシュし飽きが来ないようにしている。派手さこそないがセオリーを守った堅実な食べ方である。
  20. 「どや!不二クン!ペース遅いんやないか!?」白石が箸を休めずに不二の方に顔を向けると不二は卓上の調味料籠に置かれた青いボトルーーカネシを持っていた。「(なんやもう味付け変えるんかい…こりゃあ案外楽勝かもな)」東京はいわば二郎の本場、本場出身のロティストと戦えるこの日を心待ちにしていた白石だったがその不二が行ったのは気を衒ったロット技を1回だけ。それ以外は特筆すべき事は何もない。白石は内心肩透かしを食らった気持ちだった。「いくよ」
  21. が次の瞬間、白石はそれが油断以外の何者ではないと、そして不二俊介が天才と呼ばれる所以を思い知らされる。「三種の返し技ーー『麒麟落とし』!」ジョボボボボボボボ!!!!!!!!!!!
  22. 不二が何の躊躇もなくカネシの中身を全部ぶっかけた。「なっ!?」戦慄を覚える白石。「いただきます」ズズズズ!!カナシ全ぶっかけの絵面のインパクトも去る事ながらカネシを大量に掛けてから不二の食べる速度が明らかに増している。「不二クンさっきまでほ、本気じゃなかったんか!?」「フフッ、僕は辛党でねズルズルずる!!」微笑を浮かべる不二だったが白石の背筋には冷たいものが走っていた。
  23. 「こりゃあ面白くなって来たで!不二クン!!」「ああ、けど僕に勝つのはまだ早い…かな?」「言うてくれるやないか!」白石が不二に負け時とペースを早める!デッドヒート!
  24. ズルズルズルスル!!!!モグッモグッハフハフハフッ!!!クチャクチャクチャ!!!バキャギュギュギュ!!
  25. 「流石にそろそろ苦しなってきたね…」「せ、せやな…」現在両者の食べ具合は不二がブタを1枚だけ残し麺とヤサイは残り1/3程、白石はブタを全て食べ切り麺が2/3程ヤサイはほぼ無い。状況だけで言えば不二がやや優勢ではあるが、この終盤においてブタが残っているのは致命的である。「不二クンブタ残ってるでぇゲプッ!」「ああ…そうだね」スッ 白石がさりげなく自身の丼を不二のコップから遠ざける。「白龍は、もう使わせへんで…」「ああ…そうだね…」
  26. 確かに白龍は相手に自身のブタを押し付けるという、ロットバトルにおいて強烈な技である事に代わりはないが、聖書に同じ手は二度通用しない。
  27. 重々し手つきでヤサイと麺を口に運んでいく不二。心なしかその笑みも張り付いてるように思える。ズルッ  ズルッ  「あ、あかんもう限界や…めっちゃ腕重いで」ズルッ ズルッ  不二が麺とヤサイを全て食べ終わり残すはブタ一枚となった訳だが、「…」不二の動きが止まった。
  28. 「やっぱりブタを残しておいたのはまずかったかな」「チャンスや!」不二の弱音が聞いた白石の目に光が戻る。「秘密兵器使わせて貰うで!」「秘密…兵器…?」「これや!」白石が隠し持っていた秘密兵器、とどのつまり黒烏龍茶を取り出しそれを一気に飲み干し!口の中の二郎を完全リセット!空になったペットボトルを投げ捨て最期の気力を振り絞り麺を飲み込んでゆく!
  29. 「白石、君は…」「不二クン!どや!大阪のロティストもやるもんやろ!ズル!オエッ!この勝負勝たせてもらうで!」「僕は…」熱意溢れるスパートをかける白石、だが一方の不二は残ったブタには目もくれずに白石を見つめる。その目はまだ死んでいない。
  30. 「(不二クン、何かしでかすつもりやな…でも俺にもう白龍は通じへん!)ハフッ!モグッ!」「白石…いくよ…」「(来た!)」ズルズル!!不二が何か仕掛けてくると察知した白石、「だがその前に食い切れば何の問題もあらへん!ごちそうさまです!」白石の完食!後は丼をカウンターに戻すだけーー
  31. ズオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!!!
  32. 白石がカウンターへ戻そうと持ち上げた丼目掛け真上から垂直に隕石の落下の如く派手にブタが1つ落ちた。「な、なんやて」自身の丼に何が起こったのか全く理解できずに丼を掲げたまま不二の方へ顔を向ける白石。
  33. 不二の丼に残っていたブタがなくなっている…布巾でテーブルを吹きながら白石に向け、「第6の返し球ー『星花火』。ごちそうさま…」
  34. 「ゲームセット!ウォンバイ!不二!」
  35. ・  ・  ・
  36. 「しかし彼処で星花火とは。流石不二クンや」「フフッ」青春学園テニス部宿舎前で2人は今回のロットバトルの感想戦を行っていた。「完敗やわ!次は東京やな!」「ああ、そうだね」不二と白石が硬い握手を交わす。「それじゃあ僕はこれでまた明日」「せやな」手を振ってから、宿舎に入っていく不二。「…次は負けへんで」熱意に燃える白石、その指先は無意識にガントレットを隠した左腕をなぞっていた。